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聞こえないからこそ、伝えたいこと

公開日:2025年09月15日 最終更新日:2025年09月18日

IMG_55529月6日(土)、会員が東京都中途失聴・難聴者協会女性部を対象とした講演会を行いました。
集まったのは、生まれつき耳が聞こえない方、途中から聞こえにくくなった方など、立場も年齢もさまざまな18人です。

こんなクイズを出しました。
「あなたには難聴の障害があります。町会長から、学校避難所運営協議会の委員になり、障害者の立場から意見を言ってほしいと依頼がありました。
あなたは委員になりますか? Yes or No」
この問いに、参加者は5人ずつのグループに分かれ、Yes Noカードを一斉に上げ、多数派が景品をもらえるというルールのゲームです。
景品のお菓子をかけたゲームですが、その後のグループディスカッションで、参加者たちの意見を聞くのが目的です。

「プライバシーが保てないのではと心配」「委員になった経験がないから務まらない」と、Noの札を上げた人たちは、不安や自信のなさを率直に語りました。
一方で、Yesを選んだ人からは「災害が起きてから避難所へ行っても、私たちの声は届かない。事前に委員になって立場を理解してもらうことで、健常者にとっても障害者にとってもプラスになる」という力強い意見が聞かれました。

皆さんの言葉を聞きながら深く考えさせられました。聞こえに不自由があるからこそ、健常者との間に壁を感じ、一歩踏み出すことを躊躇してしまう。しかし、その壁を乗り越えて、自らの声で社会を変えていこうとする強い意志もまた、そこには存在していました。

質疑応答の時間では、ある女性から心に残るエピソードが語られました。
「近所の主婦と話していたら、声が聞こえにくいのでうまくコミュニケーションが取れず、その様子を見ていた主婦の小学生の子供に、家の塀に中傷の落書きをされた」という話でした。
その時、ひどく落ち込んだという彼女は、今では「もうあまり気にならなくなった」と穏やかに話してくれました。

その言葉には、どれほどの苦しみと、それを乗り越えてきた強さが宿っていました。コミュニケーションのすれ違いが、差別や心ない仕打ちにつながってしまう現実を突きつけられ、胸が締め付けられました。同時に、その痛みを乗り越え、前向きに生きる彼女の姿に、大きな勇気をもらいました。

講演会を終え、会場を後にしながら、私はふと、最近聞こえにくくなったような気がする自分自身を重ねていました。難聴は「明日は我が身」。それは特別な人たちだけの問題ではなく、誰にとっても起こりうる身近な課題です。

この講演会を通して、「お互いを理解することの大切さ」を改めて実感しました。聞こえないからといって、その人の声まで閉ざされてしまう社会であってはならない。相手の立場に立ち、耳を傾け、心を通わせようとする日々の努力こそが、私たち一人ひとりの未来をより良いものへと変えていくと信じています。

言葉が持つ力は絶大ですが、言葉だけがすべてではありません。聞こえなくても、手話や筆談、あるいは表情やジェスチャーなど、コミュニケーションの方法はいくらでもあります。防災に最も大切なのはコミュニケーションです。知り合いを作ることが防災力を高めることであり、今回の講演を通じて「伝えたい」という気持ちと、「理解したい」という心を学ばせていただきました。

文責 阿部慶一

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